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時を超えて愛される伝統工芸品「仙台箪笥」

2019/03/07

長い歴史と伝統に育まれ、凛とした美しさで多くの人々を魅了する「仙台箪笥」。木・漆・鉄から成る堅牢な箪笥を美しい工芸品へとつくり上げる様子を、「指物師」、「塗師」、「彫金師」の3人の匠の技と心を通して紹介します。

江戸時代末期、仙台藩の地場産業として生まれた生活財

国の伝統的工芸品に指定されている仙台箪笥。指物師、塗師、彫金師の卓越した技によって生まれる箪笥の歴史は江戸末期にさかのぼります。仙台藩の御用職人の工芸技術が城下の職人に伝わり広がったと言われています。明治・大正時代には、刀や羽織を納める暮らしの中の家具として武士や商家から重宝されました。指物の丈夫さ、木目を活かした漆塗りの美しさ、金具の豪華さは海外でも高く評価され、国内生産の三分の一がドイツ、アメリカなどの欧米諸国に渡っていたほど輸出が盛んに行われていました。

強さを生み出す木地が仙台箪笥の要 「指物」

仙台箪笥のベースとなる木地には、欅や栗などの木材が使用されます。木の癖などを見抜き、木取りから組み立てまでを一手に担うのが指物師。長く使われるものだけに、寸分の狂いも許されない、繊細で丁寧な作業が必要となります。本体は「三枚組・五枚組」という伝統的な継手の技法で、釘を使わず木と木を組み合わせてつくられるほか、戸板は「くるい」や「ねじれ」などが起きにくいように、「反り止め」という細工が施されています。引き出しの奥には大事なものを納める隠し細工があるものも。

そんな木地を熟練の技で仕上げる指物師のひとりが、富谷市に「工房 木香舎」を構える増野繁治さん。子どものころに見た手しごとの美しさに衝撃を受け、この世界に入ったそうです。木材の性質を見極め、丁寧に仕上げる増野さんの指物は、仙台箪笥はもちろん、オーダー家具としても高い人気を誇ります。

「腕が良いだけでは駄目。きちんと、そのモノのよさを伝えていく努力もしないとね」。その手しごとを待つ人たちのために、日々、増野さんは工房で木と向き合います。

仙台箪笥をより美しく魅せる漆の輝き 「漆塗」

仙台箪笥に工芸的な美しさを与える漆塗りは、欅などの木目を透かして際立たせる「木地呂(きじろ)塗り」という技法が使われています。下塗、中塗、上塗を行い、「塗って磨いて」を繰り返すことでその上質な輝きを放つのです。さらにこの漆塗りは、仙台箪笥に美しさだけでなく、優れた強度も与えてくれるもの。長い年月をかけて変化していく色合いもまた、仙台箪笥の魅力のひとつといえるでしょう。

そんな漆塗りを手掛ける塗師のひとりが、仙台市青葉区にある工房「有限会社長谷部漆工」12代目長谷部嘉勝さん。日本産漆の生産量の減少や人件費の高騰などで、塗師を取り巻く環境もかつてとは随分と変わってしまいましたが、長谷部さんは「変化を受け入れながら、それでも変えてはいけない手しごとの良さを繋いでいきたいですね」と語ります。

「指物、塗り、金具。それぞれの技のぶつかり合いだから、下手なものは絶対に納められない。」と笑いながらも、そこに職人としてのプライドを長谷部さんはのぞかせていました。

その家の象徴でもある華やかで豪華な仕上げ 「金具」

仙台箪笥の大きな特徴である美しい飾り金具。海外でも人気の高い龍や唐獅子、そして日本人に古くから愛されている優美な牡丹などの花の文様を打ち出すのが彫金師の仕事。仙台箪笥をより頑丈にするために使用される金具の数は200にも及ぶそう。主に鉄材を使用し、ひとつひとつ丁寧に打ち出される、そのデザインは彫金師のセンスによるというのが大きな特徴です。

仙台市若林区に工房「八重樫仙台タンス金具工房」を構える八重樫栄吉さんは、この道60年の熟練彫金師。八重樫家の特徴は龍、唐獅子、牡丹を代表的な図柄に置くことで、その出来栄えからは迫力が漂います。「図案も伝統的なものの中に新しいものを取り入れているんですよ。お客さんからのオーダーに応えていろいろ作ります。だって、できないなんて悔しくて言えないもの」と、職人としての意識の高さに溢れていました。

八重樫さんが鉄板を打ち出すのに使う道具は1300に及び、そのすべてが手作り。「自分に合っているから面白いんだよね」。そう話す八重樫さんの工房には、今日も鉄板を叩く小気味よい音が響き渡っています。

仙台箪笥の歴史と伝統を今に伝える 「仙臺箪笥歴史工芸館」

仙台箪笥の魅力を伝える“まちかどミュージアム”「仙臺箪笥歴史工芸館」。さまざまな年代の仙台箪笥の展示や、歴史・制作プロセスなどをパネルや映像で紹介しています。
「“野郎型”といわれる、刀も納めることができる幅(約120センチ)があるのが特徴の仙台箪笥。近年は生活様式の変遷に伴いサイズや色、用途など時代に合ったモダンなスタイルのものもつくられています」と語る、仙台箪笥協同組合の岡田和彦さん。親から子へ代々受け継がれ、時代を超えて愛されてきた仙台箪笥は、伝承と進化の共存という形で後世へと続いていきます。

仙台箪笥の貴重な展示資料が並ぶ仙臺箪笥歴史工芸館
モダンなデザインの仙台箪笥にも、伝統工芸の技が活かされている
「近年は住宅事情もあって小さなものが好まれるようになりました。時代に合わせて変えるべきところは変え、ずっとこの技をつないでいけたらと思います」と話す岡田さん。

実用性と芸術性を兼ね備え、百年以上使い続けることができると言われる仙台箪笥は、「指物」「塗り」「金具」、この3つの職人技が三位一体となった日本が誇る伝統的工芸品です。
大切な方への贈り物に、ご家族で代々受け次ぐ宝物に、新築の記念に、結婚のお祝いに・・・。
仙台箪笥を土産として選んでみてはいかがでしょうか。特別な想いが伝わります。

仙台箪笥協同組合
仙台市青葉区本町2-7-3ユノメ家具本店4F
仙臺箪笥歴史工芸館内
TEL:022-225-8368
http://www.sendai-tansu.com/
※外部リンク

 

仙臺箪笥歴史工芸館
仙台市青葉区本町2-7-3ユノメ家具本店4F
TEL:022-225-8368
営/10:00~18:00
休/年末年始
見学料/無料
http://www.sendai-tansu.com/kougeikan/
※外部リンク

 

仙台箪笥 家具修理 岡田工芸
塩釜市後楽町12-17
TEL:022-365-1890
http://www.remus.dti.ne.jp/~k-okada/index.html
※外部リンク

 

工房 木香舎
黒川郡富谷町穀田字瀬ノ木113
TEL:022-358-1141
http://www.mokkousya.com/
※外部リンク

 

(有)長谷部漆工
仙台市青葉区郷六字葛岡下10−4
TEL:022-302-1505
http://hasebe-sikkou.jp/
※外部リンク

 

八重樫仙台タンス金具工房
仙台市若林区下飯田字屋敷北164
TEL:022-259-2491
http://www.sentabi.jp/artfood/yaegashidtansu/
http://nakata.net/rnp/area/12223/
※外部リンク

※この記事は平成31年2月時点の情報を基に作成しています。