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宮城県美術館で日常を忘れる豊かな空間体験

2016/10/12

建築ファンも訪れる、開かれたアートスポット

仙台市営地下鉄東西線「国際センター駅」から徒歩7分。杜の都の名にふさわしく、美しい木立に包まれるように「宮城県美術館」はあります。レンガ色のアプローチを抜けて見えてくるモダンな佇まいの本館は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエに師事した前川國男の設計。加えて新館の佐藤忠良記念館や庭園で構成される敷地の中に、近現代の美術作品約6,800点を収蔵・展示しています。

前川國男の設計によるモダンな佇まいの本館

海外の専門家が驚く重要な作品を展示

宮城県美術館で主に収蔵しているのは、宮城県や東北にゆかりのある作家の明治以降の作品と、クレーやカンディンスキー、エゴン・シーレといったドイツ表現主義の作品です。特にクレーとカンディンスキーは、日本の美術館の中でも最大級の収蔵点数を誇ります。カンディンスキーの4点の絵画にいたっては、作家本人が選んで画集を作る際に取り上げた重要な作品も含まれ、彼の作品を研究する海外の専門家から「なぜこれほどの作品が極東のこの美術館に?」と驚かれるほどのものなのだとか。

収蔵作品を中心に展示する「コレクション展示」は、3ヶ月ごとに展示替えが行われ、複数のテーマに沿って展示が行われます。(クレーとカンディンスキーの作品は常に展示)

もちろん、コレクション展示の魅力はそれだけではありません。「ドイツ表現主義をはじめ近代以降の美術作品は、作家自身が感じたことを表現として作品に落とし込んでいます。だから美しいものから悲しいものまで、さまざまな人がさまざまな感じ方をしてきたひとつのセットととらえられるでしょう。言い換えれば、この美術館は“感性の博物館”といえるかもしれませんね」と話すのは、学芸員の大嶋貴明さんです。大嶋さんはコレクション展示の楽しみ方として、展示室全体を見渡して作風の違いを楽しむ、振り返って手前と奥の展示室の違いを楽しむ、大好きな1点を見つけるといった、異なる視点で作品を鑑賞する方法を教えてくれました。

鏡の国に誘われる? アリス気分で歩く庭園

宮城県美術館には建物を取り囲む美しい庭園があり、回遊できるようになっています。特に庭園の西側、本館と佐藤忠良記念館の間にある「アリスの庭」は、大きくアーチを描くハーフ・ミラーのガラスが印象的。動物をモチーフにした野外彫刻とそれを見る自分、現実の風景をハーフ・ミラーが幾重にも映り込ませ、不思議な虚構世界へと誘います。

ガラスの中にわたしが1人、2人、3人…。点在する野外彫刻と相まって、不思議な感覚を呼び起こす「アリスの庭」。

カフェとミュージアムショップでひと休み

館内にあるレストランとカフェは、作品鑑賞後の休憩に使われるのはもちろん、ここでの飲食が目的で来館する人がいるほど人気です。運営は、仙台市内に複数店舗を構え、街のカフェ文化を牽引してきた「カフェ・モーツァルト」。

正面玄関右手に、レストラン「カフェ モーツァルト・フィガロ」とミュージアムショップが並んでいます。

デザイナーズチェアとアンティーク家具が混在する店内はとても居心地がよく、時間がゆっくりと流れているように感じます。レストラン「フィガロ」では日替りの料理や自家製スイーツ、本館奥にあるコーヒーショップ「パパゲーノ」では、軽食やケーキセットなどが楽しめます。

北庭を眺めながら時間が過ごせる「カフェ モーツァルト・パパゲーノ」。四季折々の自然の景色を楽しむことができます。

アートな仙台土産を探すなら、ミュージアムショップの存在も見逃せません。店内では、特別展関連のグッズや図録、館内で原画を収蔵している絵本、スタイリッシュな文房具、宮城県美術館オリジナルグッズなどを販売しています。ここでポストカードを購入して、旅先から家族や友人に届けてみると素敵な思い出になるかもしれません。

ミュージアムショップでは、カンディンスキーの作品をデザインした手ぬぐいやトートバッグなど、宮城県美術館オリジナルグッズも販売しています。

美術のテーマパークで豊かな空間体験に身を委ねる。

収蔵作品はもちろん、庭園やカフェ、ショップと、さまざまな魅力を持つ宮城県美術館を「“美術”を題材にしたテーマパークのよう」と例えるのは、副館長の三上満良さんです。美術館へ行くことは豊かな空間体験、だからこそ関心の度合いによってさまざまな過ごし方ができるといいます。今日のお目当ては作品の鑑賞? それともレストランでランチ? きっとどんな目的でも、この美術館でならくつろぎやリフレッシュといった気分を感じることができるでしょう。

「美術館はくつろげる場所。応接室がわりに、待ち合わせなどの気軽な目的で足を運んでほしい」と話す三上副館長。